2014年5月30日

【刑法】判例刑法総論16〜20

16.最判平成24年12月7日
テーマ  公務員の政治的行為の処罰
➡︎国家公務員法102条1項の趣旨:公務員の職務の追行の政治的中立性保持による行政の中立的運営の確保,国民における行政に対する信頼の保護
➡︎一方で,国家公務員にも表現の自由の保障が及ぶと解されるから,政治的行為を全面的に規制することは許されない
➡︎したがって,国家公務員における政治的行為であったとしても,それが法の趣旨に照らして妥当(行政の中立的運営およびこれに対する国民の信頼を損ねない)と認められる行為は,罰則の対象からは除外されるべきである
➡︎逆に,国家公務員としての地位を用いる場合においては,たとえ勤務外であっても罰則の対象となり得る(猿払への配慮)
➡︎そこでいかなるメルクマールで「国家公務員の政治的行為」として罰則の対象とすべきかについて検討すると,総論的には,当該公務員がした行為の性質,態様,目的,内容等の諸般の事情を総合して考慮すべきである
➡︎敷衍すると,①当該公務員が,他の公務員に対して指揮命令や指導監督によって一定の影響を及ぼしうる地位にあるか否か,②職務の内容や権限における裁量の有無,③当該行為が勤務時間内に行われたか否か,④国ないし職場の施設の使用の有無,⑤公務員の地位の利用の有無,⑥団体行動として行われたか否か,⑦客観的に見て公務員による行為であると認められるか否か,⑧行政の中立的運営と直接相反する目的や内容の有無,が具体的考慮事由として挙げられる
➡︎本件では,①被告人は,非管理職的地位にあったこと,②下級職であったため裁量の余地はなかったこと,③本件配布行為が勤務時間外(休日)になされたこと,④国や職場の施設は使わずビラを配布したにとどまること,⑤配布するにあたり自らが公務員の地位にあることは特に明らかにしていなかったこと,⑥個人的な行動として行われたにとどまること,⑦特に公務員であることが客観的に明らかであったわけではないこと,⑧結局,自らの政治的信条に基づいてビラを配布したに過ぎず,行政の中立的運営の直接的な妨げとなるものではなかったこと,から上告には判決に影響を及ぼす理由ありと認められる

17.大判昭和10年11月25日
テーマ  法人の犯罪能力
➡︎刑法総論における諸規定に鑑みると,刑法典は,自然人のみをその対象とするものであると解することができる
➡︎法人には犯罪能力はない

18.大判昭和17年9月16日
テーマ  両罰規定における業務主の責任
➡︎国家総動員法下における統制価格違反に対する処罰は,故意過失を問わず営業者に対して及ぼす趣旨のものであると言える
➡︎無過失責任肯定

19.最大判昭和32年11月27日
テーマ  過失推定説
➡︎所得税法における従業員の所得税の逋脱については,事業主が当該従業員の選任監督につき過失がないことを証明しない限りにおいて,その刑責は免れない
➡︎過失の推定が働く(反証を許す)
 
20.最判昭和40年3月26日
テーマ  過失推定説(法人事業主への推及)
➡︎事業主が法人であった場合においても,19.の法理は妥当する
➡︎過失推定の法人への推及

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