2014年5月29日

【民事訴訟実務の基礎】要件事実①—売買⑵

⑴売買契約を訴訟物とした場合に採り得る,被告側の抗弁

・抗弁なので,請求原因と両立する(請求原因事実による請求権の発生自体を認容した),
権利障害事実,権利消滅事実,権利阻止事実を記載することになる。

・権利障害事実として記載され得るものの代表例
①錯誤無効(95条)
②詐欺・強迫取消(96条)
etc...

①錯誤無効の抗弁
民法95条
意思表示は,
(B)法律行為の要素に
(A)錯誤があったとき
は無効とする」
➡︎
(A)意思表示に錯誤があったこと
(B)当該錯誤が法律行為の要素であること

②詐欺取消の抗弁
民法96条1項
「(A)詐欺…による意思表示は,
取り消すことができる」
➡︎
(A1)欺罔行為の存在
(A2)欺罔による表意者錯誤
(A3)上記2要件に基づく意思表示の存在
(A4)表意者の取消の意思表示

・権利消滅事実として記載され得るものの代表例
①消滅時効(167条)
②弁済(493条)
③履行遅滞解除(541条)
etc...

①消滅時効の抗弁
民法167条
「債権は,
(A)十年間行使しないときは,
消滅する」
民法145条
「時効は,
(B)当事者が援用しなければ,
裁判所がこれによって裁判をすることができない」
➡︎
(A)時効期間の経過
(B)時効援用の意思表示
※時効期間の経過については,時の経過であるため顕著な事実となり,
時効援用の意思表示が裁判上なされたときは,これも顕著な事実となるため認否の対象にはならない

②弁済の抗弁
民法493条
「弁済の提供は,
(A)債務の本旨に従って
(B)現実にしなければならない」
➡︎
(A)債務の本旨に従った弁済
(B)当該債権に対する弁済であったこと

③履行遅滞解除の抗弁
民法541条
当事者の一方がその債務を履行しない場合において,
(A)相手方が相当の期間を定めてその履行の催告をし,
その期間内に履行がないときは,
相手方は,契約の解除をすることができる」
➡︎
(A1)被告に対して催告をしたこと
(A2)催告後相当期間が経過したこと
(A3)相当期間経過後の解除の意思表示
(A′)催告に先立つ反対給付の履行の提供(同時履行の存在効果消滅のため)

・権利阻止事実として記載され得るものの代表例

⚫︎同時履行の抗弁
民法533条
双務契約の当事者の一方は,相手方がその債務を履行の提供をするまでは,自己の債務の履行を拒むことができる」
➡︎権利抗弁
➡︎事実記載としては,
『被告は,原告が本件目的物を引き渡すまで,その代金の支払いを拒絶する』となる。

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