2014年5月29日

【刑法】判例刑法総論6〜10

第2 事後法の禁止
6.大判昭和16年7月17日
テーマ  労役場留置期間の延長
➡︎労役場留置は,刑罰としての罰金が支払えない場合に代替的に採られる措置である
➡︎改正前刑法の法定留置期間<改正後刑法の法定留置期間となった場合
➡︎刑に準ずる位置づけにあるから,不利益変更原則に反する
➡︎改正前の範囲内において宣告すべき

7.最決昭和42年5月19日
テーマ  刑の変更による公訴時効期間の変更
➡︎適用されるべき刑の選択時および公訴時効の起算点につき,実行行為時にするか裁判時にするかが問題となった
➡︎公訴時効は訴訟法上の制度であるが,刑の選択のいかんによってその適用される時効期間が異なる
➡︎原則は,裁判時に存在する法律によって判断されるべきであるが,適用されるべき法律が変更される事態があった場合には,実行行為時を起算点として計算されるべき

第3 類推解釈の禁止
8.最判昭和30年3月1日
テーマ(ここでは) 人事院規則14-7にいう「特定の候補者」の意義
➡︎同規則では「特定の候補者を支持し又はこれに反対すること」を公務員の政治的活動の一として禁じている
➡︎原審では,「立候補しようとする特定人」を支持することが,同規定違反であると認定した
➡︎類推拡大解釈は,特段の根拠なくして許されてはならないが,本件においては,特段の根拠は認め難いし,一般の国民から見ても,未だ立候補していない者を候補者と解釈するには無理がある
➡︎文理解釈すると「法令の規定に基づく立候補届出または推薦届出により,候補者としての地位を有するに至った特定人」であることがわかるのであって,これを準則とすべきである

9.最大判昭和31年6月27日
テーマ  火炎瓶は「爆発物」か
➡︎爆発物取締罰則(太政官布告!!)では,「爆発物」を規制するもの
➡︎マッチの軸頭薬が爆発物に含まれるの?
➡︎『理化学上の爆発現象』を生じさせる薬品を対象とすべきである
➡︎刑法典にも激発物破裂の罪があって(117条),特別法として爆発物取締規則がより重い法定刑を科する構成になっているため,後者の範囲は前者よりも限定される
➡︎マッチの軸頭薬も広義の爆発物には含まれるけど,特別法による重い処罰を対象とする程度のものではないから,同規則にいう「爆発物」には該当しない

10.大判明治36年5月21日
テーマ  電気窃盗事件
➡︎電気は,窃盗罪(235条)の財物に含まれるか?
➡︎原則,財物は有体物だけど,電気は五官の作用によって認識することができる有体物ではない
➡︎窃取可能物は,①可動性②管理可能性があるもの
➡︎電気は,この2要件を充足するから窃盗の目的物となる

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