2014年5月29日

【刑法】判例刑法総論11〜15

11.大判昭和15年8月22日
テーマ  ガソリン・カー
➡︎往来危険罪の客体にガソリンカーは含まれる?
➡︎文言上,『汽車』を対象としているが,ガソリンカーは,汽車と同視し得る
    (鉄道会社内において汽車と同様の管理体制がとられている)
➡︎含まれる

12.最大判昭和50年9月10日(徳島市公安条例)
テーマ(ここでは)  明確性の原則
➡︎同条例における『交通秩序を維持すること』が曖昧不明瞭なのでは?
➡︎「通常の判断能力を有する一般人の理解において,具体的場合に当該行為がその適用を受けるものかどうかの判断を可能ならしめるような基準が読み取れるかどうか」が明確性の有無のメルクマールである
➡︎本件規定は,明確性に欠くところが見受けられない
➡︎罪刑法定主義違反とはならない

13.最大判昭和60年10月23日(福岡県青少年保護育成条例事件)
テーマ(ここでは)  明確性の原則②
『淫行』の意味
(法廷意見)
➡︎青少年の保護及び育成を目的とする本条例の下では,青少年の健全な育成を阻害するおそれのあるとして社会通念上非難を受けるべき性質のものが,罰則の対象となる
➡︎敷衍すると,『青少年を誘惑し,威迫し,欺罔し又は困惑させる等その心身の未成熟に乗じた不当な手段により行う性交又は性交類似行為のほか,青少年を単に自己の性的欲望を満足させるための対象として扱っているとしか認められない性交又は性交類似行為』である
(伊藤反対意見)
➡︎わいせつの傾向犯につき,各地の条例で異なる罰則を設けているのは合理的なの?
➡︎わいせつ犯に対する処罰感情は地域により相対化されるものではない
➡︎さらに,刑法典にわいせつ犯についての罰則規定が設けられていることとの兼ね合いから,かような条例は,上乗せ条例であるといえるが,それを正当化できるものか否かは甚だ疑問である
➡︎『淫行』という文言も,特別法的位置づけになる条例における罰則においては,国法よりもさらに明確性が要求される
➡︎法廷意見のごとき要件は,通常の判断能力を有する一般人の理解において,具体的場合に当該行為がその適用を受けるものかどうかの判断を可能ならしめるような基準が読み取れるかどうか,という準則に適合しているということには首肯し難い

14.最大判昭和35年1月27日
テーマ  医業類似行為
➡︎はり師,きゅう師,あんま師etc...のみがなし得る行為である医業行為を資格なしに行う医業類似行為の禁止に当たらない行為をしたのに,有罪判決を受けたから上訴
➡︎医業類似行為を禁じているのは,禁止することによって公共の福祉を保持することができるためであり,国民の健康に害を及ぼす虞れがあるか否かがメルクマールである
➡︎原審によればこの点が事実認定上明らかではないため,破棄差戻し

15.最判昭和57年9月28日
テーマ  薬事法違反事件
(法廷意見)
➡︎市販されてるサプリメントと同様なタブレットを販売したら,医薬品の不当販売だとして起訴された
➡︎人体に対し有益無害であっても,通常人の理解において『人又は動物の疾病の診断,治療又は予防に使用されることが目的とされている物』に該当するからアウト
(木戸口反対意見)
➡︎今回のような物を薬事法上の医薬品としてしまうと,市販されてる多くの健康食品もその規制対象となる
➡︎そのような健康食品の中には,本当に有益無害なものもあり,国民の健康を守るために不当医薬品が乱立しないように設けられている薬事法の趣旨を没却する
➡︎今回みたいな物は,食品安全法の対象とすれば足りるから,法令の解釈適用を誤った違法があるといえる

0 件のコメント:

コメントを投稿