2014年6月9日

【民事訴訟法】権利能力なき社団の当事者能力①

・訴訟上の当事者とは?
   形式的当事者概念によれば,判決の名宛人となる者(紛争当事訴訟物につき,直接に權利義務の帰属主体となる者)のことを指す。

・当事者能力とは?
   当該訴訟の具体的状況を離れて,一般的に民事訴訟の当事者となることができる地位ないし資格

・当事者能力を有する者は?
   原則として,民事訴訟法28条の通り,民事実体法(殊に民法)において,權利義務の帰属主体とされる権利能力を有する者である。
   ただし,訴訟法上の特則として,民事訴訟法29条で,一定の縛りをかけて,「法人でない団体」にも当事者能力が与えられている。

・民事訴訟法29条が法人でない団体に当事者能力を認めた趣旨は?
   実体法上権利能力が与えられている者(自然人・法人)以外でも,社会的実体として経済取引上に登場し,紛争を発生させ,巻き込まれるものを観念することができるが,まさに,法人でない団体はこれに該当する。
   民事訴訟が社会で生じる紛争を解決する機能を担っているということに鑑みれば,法人でない団体に対しても当事者たる地位を与えることにより,適切な紛争解決をなすことができるし,訴訟法上も便宜である。
  なぜなら,もし,法人でない団体に当事者能力を認めない上,当該団体が有する財産についての紛争が生じたとすると,判例・学説上当該財産は全構成員に総有的に帰属するという理解であるため,全構成員を訴訟に関与させないとならず,いわゆる合一確定が必要になってしまうため,固有必要的共同訴訟を提起しなければならず,当事者たる地位にある者の1人でも訴訟に参加させないと,訴えが不適法却下されたり,勝訴判決を得たとしても,判決効が適切に及ばず,意味がなくなってしまう可能性が生じてしまい,手続的に不安定になってしまうからである。

・権利能力なき社団と言うための要件とは?
   判例を分析すると,①対外的独立性,②対内的独立性,③内部組織性を有する団体であって,代表者等の定めのある団体であることが必要である。
   財産的独立性については,社会的に独立した団体であることのファクターとして扱うのが,より一般化した形の当事者能力付与基準を提供できるため,原則としては必須要件とすべきではない。


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