2013年9月14日

重判24年度版―民法1「違法建物の建築を目的とする請負契約が公序良俗違反とされた例」

【科目】
重判24年度版―民法1「違法建物の建築を目的とする請負契約が公序良俗違反とされた例」

【判決日時・種類】
最二判平成23年12月16日

【収載判例集】
判時2139号3頁
判タ1363号47頁
金法1959号102頁

【事実の概要】

1.基礎となる契約
<契約の種類>
A-Y間において,Aを注文者・Yを請負人とする建築請負契約(本件契約)
<契約の内容>
 ①本件契約において,完成後に予定されている建物賃貸借の採算の関係により,違法な建物を建築する
 ②手筈として,建物建築の際に一旦適法な建築を行った上で,同建築の完了後に改めて該当場所を違法な建築へと変更する工事を施行する

※なお,本件契約締結後,YはXとの間で当該契約について,Yを注文者・Xを請負人とする下請契約を締結しており,契約の内容についてYから説明を受け,Xはこれを了承していた

2.事実の経過
(1) 建築確認申請及び同確認がなされ,着工された後に,当該建築物を管轄する区役所が当該建築物が違法なるものであると知り,Xは違法を是正する追加変更工事を行わざるを得なくなった。
(2) そこでXは,本件建築物に対し追加変更工事を行った上,当該建築物をYへ引き渡したが,Yは,工事代金として当初予定されていた(追加工事にかかった費用を含まない)額をXに支払うにとどまった。
(3) Xは,追加工事にかかった費用についての支払を求めて,原々審(東京地裁)に出訴―本訴請求
(4) Yは反訴として建造物の瑕疵に基づく損害賠償を請求―反訴請求

3.原々審の判断及び経過
 建築基準法(及び付随する法規)違反による当該契約の無効については何ら検討することなく,本訴・反訴請求それぞれを一部認容
 XY両者ともに控訴(東京高裁)

4.原審の判断及び経過
①建築基準法違反があるからといって,かかる建築請負契約が直ちに無効になるとはいえない
②しかし本件契約は全体として強い違法性を帯びている
③したがって社会的妥当性の観点から本件契約の効力を是認できない
④よって,強行法規違反ないし公序良俗違反である
として,本件契約の効力を否定し,XY両請求を棄却
Xのみが上告

【判旨】
破棄差戻し


<本件契約について>
①本件契約の内容は,「確認済証や検査済証を詐取して違法建物の建築を実現するという,大胆で,極めて悪質なもの」である
②本件契約によって違法な建物が建築されたとすると,「居住者や近隣住民の生命,身体等の安全」を著しく害することとなる
③かような違法がある建物は,一たび建築が完了してしまえば「事後的にこれ(違法)を是正することが相当困難」であるものを含んでいることも窺い知れる
☟よって
本件契約における違法性は軽微なものとはいえない
☟また
④本件における上告人(の管財先)たるXは,本件契約における違法につき十分覚知しており,かつかような要望をしてきたYに反論することのできる立場であった
☟つまり
XはYに対し従属的な関係にあったとはいえない
↓これらを総合すると
「本件各建物の建築は著しく反社会性の強い行為であ」り,「本件各契約は,公序良俗に反し,無効である」



<追加変更工事について>
①本件契約に基づく違法建築を是正するために行われたのが本件追加変更工事である
②XY間における別途の合意によって本件追加変更工事が施工された
☟よって
本件追加変更工事は,「(本件契約による)工事の一環とみることができない」
☟そうすると
a)本件契約に基づく違法な建築であるある部分は公序良俗に反する
b)本件追加変更工事により,違法が是正された部分は適法なもの
という分類をしなければならず,原判決は破棄を免れず,さらに審理を尽くさせるため,本件を原審に差戻す。

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