この数か月間、仕事にかまけて勉強がおろそかになってしまったから、反省の意も込めて、なるべく多く更新しようと思う。
ニュースをベースにして、自分なりに楽しく勉強しよう。
ということで、今日はこのニュースから。
東芝は、経営トップも含めた組織的な関与によって不正な会計処理を行っていた問題で、田中前社長ら歴代の3人の社長を含む旧経営陣を相手取り、損害賠償を求める訴えを起こす方向で調整を進めていることが明らかになりました。
一見、『当然じゃない?』と思うかもしれないけど、会社法では、必ずしも『当然』とはいえないみたい。
※以下の記載は、新聞報道を元に推測を書き連ねたものです。
当該会社(東芝)からは、以下のようなIRが発表されておりますので、公式発表ではない、ということを付言しておきます。
役員責任調査委員会に係る一部報道について
1.会社法は会社を信頼している…?
今回のニュースを分析するにあたり、会社法の規定をザーッと眺めてみた。
学部・ローを通じてほとんど、会社法・商法に親しまなかったため、その規定ぶりがとっても新鮮だった。あんなにも定義規定が充実しているうえ、細かい分岐があったりしてわかりやすいのかわかりづらいのかさえ分からない法律は初めてだ!
そんなことはどうでもいいとして、標題の件についてみてみよう。
会社法847条1項は以下のように規定している。
六箇月(これを下回る期間を定款で定めた場合にあっては、その期間)前から引き続き株式を有する株主(第百八十九条第二項の定款の定めによりその権利を行使することができない単元未満株主を除く。)は、株式会社に対し、書面その他の法務省令で定める方法により、発起人、設立時取締役、設立時監査役、役員等(第四百二十三条第一項に規定する役員等をいう。)若しくは清算人(以下この節において「発起人等」という。)の責任を追及する訴え、第百二条の二第一項、第二百十二条第一項若しくは第二百八十五条第一項の規定による支払を求める訴え、第百二十条第三項の利益の返還を求める訴え又は第二百十三条の二第一項若しくは第二百八十六条の二第一項の規定による支払若しくは給付を求める訴え(以下この節において「責任追及等の訴え」という。)の提起を請求することができる。ただし、責任追及等の訴えが当該株主若しくは第三者の不正な利益を図り又は当該株式会社に損害を加えることを目的とする場合は、この限りでない。
さて、どうしたものか。長すぎて何が書いてあるのか全然わからない。
ザクッと要件をまとめると、
①一定の要件を備えた株主は
②会社のお偉いさんの
③サボり(任務懈怠)による
④会社への損害について
⑤会社に対して
⑥責任追及の訴えを提起することを
⑦請求できる
っていう感じ。
うむ。これだけみても、いまいちパッとしない。
そこで、同条3項もみて見よう。
株式会社が第一項の規定による請求の日から六十日以内に責任追及等の訴えを提起しないときは、当該請求をした株主は、株式会社のために、責任追及等の訴えを提起することができる。
こっちはシンプルだ。株主が、会社に対して同条1項の請求(「提訴請求」という)をしたのに、会社が何のアクションも起こさなかった場合には、株主がダイレクトに 責任追及等の訴えを提起できるってことだね。
さて、この2つの条文を見比べてみて、会社法が考えていることを推測してみようか。
きっと、会社法は、
Ⅰ.会社がお偉いさんがしたサボりに対して責任を追及するのは当然じゃね?
Ⅱ.でも、会社が何もしないってこともあるよな・・・
(お偉いさんが違う人にすげ変わったとしても、保身のために提訴しないかも・・・)
Ⅲ.それじゃあ、会社の所有者である株主さんに活躍してもらおう
Ⅳ.でも、やっぱり本来、会社が責任追及をするのが筋だから、とりあえず、株主さんは、会社に「訴訟提起してね!!」っていえる体制を作ってあげよう
Ⅴ.そうはいっても、会社が提訴しないリスクもあるから、そこの手当として、時間で区切って、株主さんにも訴訟提起を認めてあげよう
ってなノリで、この制度を設計したに違いない!!
以上!!!
遠回りになったけど、結論的は、標題に書いてあることに対する回答として、
会社(というかお偉いさん)に絶対の信頼は置けないけど、とりあえず信頼しといてあげるから、ちゃんと責任追及してよね!!
ということでしょう。
2.頑張ってますよアピール?
さて、1.の話は、提訴請求について相当噛み砕いた、法律論的な側面からの検討だったわけだけれども、より現実論的には、今回の提訴のプレスは、新経営陣が”ちゃんと頑張って経営してますよ”ってのをアピールするものにみえるね。というのも、会社としては、上でみたように、株主からの提訴請求があってから、初めて責任追及に動き出すことが、法律上許されているから、そこまで”知らぬ存ぜぬ”でいたとしても、リーガルリスクはないわけで、それも立派なビジネス上の判断だとも思う。
でも、役員責任調査委員会のメンバーとして、二人の元判事と一人の元検事を招聘したり、社外取締役に元検事を採用しているところをみると、旧経営陣の法的問題に対する責任追及の姿勢を整えているといえる。
といった感じで、今回の”不適切会計”にきちんと対応するために万全な体制を整え、新経営陣として、頑張っていきます、という所信表明であるといえそうだね。
3.訴訟費用・弁護士費用の節約・・・?
さらにさらに、株主代表訴訟が提起される前に、先手を打つように会社が提訴するとの報道が流れた背景には、お金との関係も考えられるんじゃないかと邪推する。
というのも、もし、株主代表訴訟が提起されて、実際に責任追及の訴えが係属したとすると、株主は「株式会社のため」に訴訟を追行すること(これを「法定訴訟担当」という)になり、その判決の効力は会社にも及ぶ。(これを、「判決効の拡張」という)
株主は法的知識が不足していることが多いため、弁護士に訴訟代理人をしてもらう。そうすると、弁護士費用がかかる。
また、それ以外にも、報告会や検討にあたって様々な費用がかかる。
これらの費用が、いわば”会社の関知しないところ”でかかってしまうと、会社としては困ってしまう。
なぜかというと、株主代表訴訟において勝訴の判決を得たときには、弁護士費用や必要費用などのうち相当額を会社に請求できる決まりになっているからである。(会社法852条1項)
そのような請求をされるくらいなら、最初から会社自身が訴訟を提起したほうが、安上がりに済むかもしれない。(規模の経済とかを考えれば、株主の一部が提訴するより、会社が提訴したほうが幾分か費用を抑えることができるかも・・・)
ということで、種々検討してみたけど、まとまりがない文章となっていること請け合いである。
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